都内を網の目のように張り巡らされた首都高速。誕生から60年を経て、今も首都の大動脈としての重責を果たしている。その間、社会情勢に合わせ料金体系が何度も変更されており、その都度注目される。その首都高が今度は脱炭素社会実現に向けた取り組みを検討中で、また注目を集めそうだ。
その「検討中」の取り組みとはZEVの首都高割引制度だ。首都高の料金優遇制度が日本でなかなか売れない電気自動車や燃料電池車の普及に向けた追い風になるのか?東京都の狙いとその効果について検証してみたい。
文/清水草一、写真/Adobe Stock、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】ZEV普及の有効打になるのか? 首都高の新たな割引案の真意に迫る(7枚)■ゼロエミッション・ビークルへの割引は妥当なのか!?
昨夏に開催された東京オリンピックの交通渋滞緩和のひとつとして、首都高速道路のマイカーの通行料金が、通常料金に1000円上乗せされたことは記憶に新しい。

その首都高が、今度は、電気自動車(EV)など「脱ガソリン車」の普及策の切り札として一役買う「妙案」が浮上している。
昨年の東京都議会定例会の主要会派による代表質問で、小池百合子都知事が環境問題について、排ガスを出さないゼロエミッション・ビークル(ZEV)の首都高料金割引を目指すという方針などを表明したのだ。
都民ファーストの会の小山有彦都議から、ZEVの普及策について問われた小池知事は、高速道路料金の決定権を持つ国に対し、首都高でのZEVの料金割引を要請していることを明らかにするとともに、「導入への強力なインセンティブ(動機付け)になる」と強調。「今後、さらに、全国の自治体へ、国への要請を働きかける」とも語った。
果たしてZEVに対する首都高の料金割引策は妥当なのか? 高速道路研究家の清水草一氏の意見を聞こう。
■首都高の優先割引がZEVの普及につながるのか?と言えば微妙なところだ
ZEVに対する首都高の割引は、普及に効果があるのか? と問われれば、「それぞれのユーザーの使い方と割引率による」と答えるしかない。
通勤で日常的に首都高を使っているユーザーの場合、仮に料金が100%割引になれば、片道700円(≒平均利用料金)と仮定して、平日毎日往復利用すると、月に2万8000円の節約になる。年間だと30万円以上。これは強力なインセンティブだ。
しかし、純粋な通勤目的のため、日常的に乗用車で首都高を利用しているユーザーはかなりかぎられる。毎日のように首都高を使っているクルマは、トラックなどの物流関係や商用車が大部分だ。首都高は基本的に「お仕事で使う道路」なのである。もちろん通勤もお仕事ですが、運ぶ荷物なしの通勤利用は、非常に贅沢という感覚になり、一般的には行われていない。
トラックや商用車のZE(ゼロエミッション)化を後押しするのも重要な施策だが、現状、ようやく導入され始めたEVトラックは、地域拠点から個別配送を担う「ラストワンマイル」向けで、首都高を頻繁に使うことは考えにくい。今後、長距離走行可能なZE大型トラックが登場しても、首都高だけの割引では効果は低い。
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